個人再生は欠かせない
大口定期預金についての規制も段階的に緩和され、一九九一年十一月には、預入金額三○○万円以上の「スーパー定期」が登場し、これにより三○○万円以上の定期預金金利は完全に自由化されました。
小口の定期預金については、一九八五年三月に上限金利がCDレートに連動する市場金利連動型預金MMCが導入されました。
当初MMCの最低預入金額は五○○○万円、期間は一〜六ヵ月でしたが、その後段階的な緩和措置がとられ、一九九○年十一月にMMCは、大口定期預金金利に連動する新型MMCへと移行して、最低預入金額は一○○万円となり、さらに一九九一年四月以降、MMCの最低預入金額は五○万円に引き下げられました。
一九九三年には定期預金金利の完全自由化に伴い小口MMCは廃止されました。
貸出市場における金利決定のルールを見ましょう。
まず銀行の短期貸出金利(一年未満の貸出が対象です)については臨金法による最高限度の定めがありますが、実際には全国銀行協会連合会(全銀協と略称されます)による自主規制という形で公定歩合に連動して上限が定められています。
一方、その下限については、一九五九年(昭和三十四年)二月以降、「標準金利」の制度が導入され、公定歩合に連動する形で決定されてきました(短期プライム・レートと呼ばれます)。
最後に残された流動性預金の金利自由化については、一九九二年に自由金利の貯蓄預金(市場金利連動型の要求払い預金)が導入され、さらに一九九四年に当座預金を除いた流動性預金の金利が自由化されました。
さて、それでは自由化された預金金利はどのように変動するのでしょうか。
これまでの説明からわかるように、自由な預金金利はコール・手形レートをはじめとした短期金融市場金利と連動するはずです。
実際、CD(譲渡性預金)は短期金融市場商品の一つとして挙げられるものですし、また大口定期預金もCDと極めてよく似た金融商品なのです。
したがって、預金金利の自由化はオープン市場の急拡大にも等しい効果を持つのです。
その後一九七五年(昭和五十年)四月以降は、公定歩合変更のつど、全銀協の会長行を務める銀行が短期プライム・レートの変更を公表し、その他の銀行がそれに追随するという形でのリーディング・バンク方式が採用されました。
なお、一九八九年(平成元年)一月には当時全銀協の会長行を務めていたM銀行が調達資金の荷重平均コストを反映した新方式の短期プライム・レート(新短プラと略称きれます)の導入を公表し、その他の銀行にも新短プラが広がっていきました。
次に長期貸出金利(期間一年以上の貸出が対象です)については臨金法による最高限度の定めはなく、各行が自由に決定することになっています。
もっとも、長期信用銀行、信託銀行が公表している電力会社向け貸出などの最優遇金利(長期プライム・レートと呼ばれます)は、それぞれの主たる資金調達手段である利付金融債・貸付信託の金利に一定のマージン(これまでずっと○・九%です)を乗せる形で決定されており、長期貸出金利の建前上の下限となっています。
なお、一九九一年四月には、都市銀行が新短期プライム・レートに連動する新方式での長期プライム・レート(新長プラと略称されます)の導入を発表し、現在では長期プライム・レートと新長期プライム・レートが並存しています。
このように貸出市場の金利決定に関しても従来から一応のルールは存在しましたが、金利自由化が進行する前の預金市場と比較しますと、規制の効き具合は格段に緩やかでした。
昭和四十年代前半までのいわゆる高度成長期におけるわが国の預金・貸出金利の動きを比較すると、預金金利が人為的な低水準に設定され、その動きも極めて硬直的であったのに対して、貸出金利は表面ベースで見ても預金金利よりは弾力的に変動しました。
ざらに借入の見合いで企業が金融機関に置く拘束性預金の歩留まりを考慮に入れた実効金利ベースで見ると、貸出金利はより弾力的であったと考えられます。
こうした貸出金利(ことに貸出実効金利)と預金金利の弾力性の差が、高度成長期において金融機関の収益を保障する力でした。
当時においては金利が全般に上昇する金融引き締め期に金融機関の収益が好転したのは、まさにそのためなのです。
ところで、昭和五十年代から日本経済は低成長期に入り、企業が設備投資や在庫投資を行うために必要とする借入資金の需要は、嘗ての高度成長期と比べて格段に少なくなってきています。
このように貸出需要全体の伸びが鈍化する中で、嘗てのような長期貸出と短期貸出、大企業貸出と中小企業貸出といった区分はあいまいになり、各業態の金融機関がお互いに入り乱れての貸出競争が激しくなっています(例えば、都市銀行は、従来の短期貸出中心から長期貸出にも積極的に乗り出すほか、従来の大企業貸出中心から中小企業貸出、個人ローンなどの占める比率をふやしています)。
この結果、金融機関と企業との力関係は、嘗ての金融機関優位から次第に企業優位へと変わってきています。
貸出金利の決定についても、従来は優遇レートとされていた短期プライム.レートの適用先が急速に拡大するとか、実質的に長期プライム・レートを割り込む低利の貸出が増加するなどの動きが、最近の貸出市場においては顕著なのです。
一方、預金市場においては金利自由化が急速に進み、金融機関にとっては自由金利の調達比率が上昇していますので、金融機関(ことに中小金融機関)の収益環境は従来と比べて厳しくなる傾向にあるといえます。
金融機関間での相対取引の市場であり、しかもお互いの間での長いつきあいを前提とする取引が多いのですが(金融機関はそうした長い取引関係を通じて企業の経営状態、将来の成長性などについての独自の情報を蓄積していきます)、そうした貸出市場の性格からすると、例えば金融引き締め期に短期金利が大幅に上昇したとしても、貸出金利はそれほど引き上げないかわりに、逆に金融緩和期に短期金利が大幅に下落したとしても、貸出金利はそれほど下げず、ある程度長い期間をならしてみれば、金融機関も企業も比較的安定した貸出(借入)金利のメリットを受けるという話は大いにありえます。
この場合、貸出金利が粘着的であり、同時に貸出市場は均衡しているのです。
ところで、わが国の貸出市場における貸出金利の粘着性は、金融機関の資金調達の圧倒的部分を占める預金の金利が従来は硬直的であったことにより支えられていた面があったと考えられます。
したがって、すでに説明したような預金金利の自由化(短期金融市場金利との連動化)が進んでくると、金融機関としては、それに対応して貸出金利を従来よりも弾力的に動かさざるをえないことになります。
具体的には、スプレッド・バンキングと呼ばれるような市場金利連動型の貸出金利の決定が今後の主流となっていくことが予想されます。
実際にも、短期金融市場金利に一定のスプレッド(利ザヤ)を乗せて貸出金利を決めるスプレッド貸出が徐々にふえていますし、従来は公定歩合と密接な関係を持っていた短期プライム・レートについても、新短プラの導入という形で調達コストとの連動性を持たせるような見直しが実施されています。
これらの動きは、貸出金利の変動を間違いなく従来よりも迅速かつ大幅なものにすると予想されるのです。
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